土着喫茶TOKYO

田野隆太郎、ラジカルローカル『土着喫茶TOKYO』、戎光祥出版、2010


これは珍本。喫茶店の紹介本だが、大規模駅に近い、行きやすいところはあえて避けられていて、東京でも、他所の人があまり立ち寄らない、地元住民向けの喫茶店だけを取り上げている。

場所は、東十条、東日暮里、扇橋、東大井、下谷、足立、芝大門、高松(豊島)、八広、北町(練馬)井草、羽田、八重洲、三筋(台東)。どこも、わざわざそのために行く場所ではない。

どこの店も、確実に40年以上は営業しているだろうというものばかり。店をどうやって探してきたのか、よくわからない。古い喫茶店はネット検索に引っかからないし、電話帳を見ても、喫茶店は多すぎてどこに行けばいいのかわからない。まあ、足で稼いできたということだろう。

単にレトロな店を取り上げているのではなく、「まともに客商売をする気がない店」(この本では、「家系喫茶」と呼ぶ)は取り上げないという方針がある。客が来るか来ないかはほぼ無視して、自分の家感覚でやっている店は取り上げないということ。そういう店はけっこういっぱいある。しかも、入ってみないと、客の扱いがどうかはわからない。

この本を書くには、相当いろいろ店を回っただろうという見当はつく。基本的には、そのエリアに住んでいる人のための店。こういう企画は、本だけでなく、ネットでしてくれるといいのに。東京のローカル喫茶店を回るのはこっちにはたいへんだ。