ラーメンと愛国

速水健朗『ラーメンと愛国』、講談社現代新書、2011


これも世評の高かった1冊。確かにおもしろい。

簡単にいうと、「ラーメンの歴史」である。水戸光圀がどうのという俗説(本書では、まったく根拠なしと退けられている)はおいといて、ラーメンが戦後日本における粉食文化の拡大から始まっていて、その元は、国内で余った小麦の輸出先を開拓するためのアメリカの戦略だったことが書かれている。

その後は、チキンラーメンをはじめとする、「インスタントラーメン」の歴史、地方の国土開発と「ご当地ラーメン」の開発の連動性、90年代になってから、マスメディアがラーメンを大きく取り上げるようになり、ラーメンがテレビのリアリティショーと結びつく形で、特殊なジャンルの食文化として定着していった過程が書かれている。

自分は80年代に東京にいて、「環七ラーメン戦争」やら、TVチャンピオンの「ラーメン王選手権」を見ていたので、ここに書かれていることは、非常に懐かしい。そういう視点からすると、グルメブームがラーメンとどうつながっていて、食べ歩きとラーメンが非常に親和的だったことはよくわかる。

しかし、最後の著者がラーメンとナショナリズムをくっつけているのは蛇足。というか無理がある。ラーメンというジャンルは完全に日本化されてしまったので、そこにナショナリズムが好きな人がラーメンに近寄りやすくなったというだけのこと。別にラーメンがナショナリズムを引き寄せているわけではないし、食べている客にも政治的主張は届いてない。そんなものより、「ラーメンポエム」のような、一見意味不明な能書きを深く掘ったほうがよかったのに。

札幌ラーメンと博多ラーメンは全然違うところから始まっていること、ラーメンという名前は語源はともかく、インスタントラーメンを道具にして広まったことなど、勉強になったこと多し。良書であることは確か。