嫁へ行くつもりじゃなかった

岡田育『嫁へ行くつもりじゃなかった』、大和書房、2014


エッセイスト兼編集者をしている著者の結婚エッセイ。ただのノロケや結婚についての説教本なら読まないところだが、著者は、重度のヲタクで、「人生ソロ活動」を標榜していた人なので、そこそこおもしろいはず、と思って読んでみた。実際、おもしろい。

著者は、恋愛して結婚するのは自分にはなかなか難しいが、生活を共にしていけるかどうかを慎重に測って、結婚することはできるだろうと考えて、それを現実に実践している。著者の夫(仮名で、「オットー氏」としてある)は、著者のいろいろな生活上の要求に寛容な人で、これだけ共同生活への要求が受け入れられれば、それは結婚するだろうと思う。

恋愛なし、交際期間ゼロ、大量のヲタク荷物はトランクルームで確保、住居は「一人になれる部屋」を著者のために確保した上で一人時間を確保(夫には個室はない)、出産はしばらくは考えない、などなど。そんないい話があるものかと思うが、現実にあるところにはあるのだから、しかたがない。

ひととおり読んで、著者が、自分の結婚における優先順位をきちんと決めていて、優先順位の高いことが解決されれば、どうでもいいことは気にしていないことがよくわかる。これはいい買い物をする時に必ず必要な資質だから、それができる著者がよい結婚ができていることには納得。さらに、「銛ガール」というタイプの女性のことが言及されていて、これは、モテることになど目もくれず、結婚相手になれる男性を慎重に見極めて、銛で突くように相手を落として(相手に好かれるような状況を作って)結婚する女性のこと。こういう人はたまにいるわね。

逆に、今どき、著者のような人は結構多いわけで、晩婚化、生涯未婚率の上昇は当然と思わされる。自分の生活が満たされた上での結婚生活でなければいけないのだから、条件は厳しいのだ。もっとも、女性を「産む機械」扱いする公人の発言については、著者はかなり厳しい態度で、そのことについて一編書いてもいる。