昭和遺産探訪

藤木TDC『昭和遺産探訪』、宝島社、2012


昭和にあったもので、「2012年現在、まだ残っているもの」を取り上げた本。元は『月刊宝島』の連載に加筆したもの。この本に収録されているのは、2008年から2012年までの連載分だから、まだ残っているとは限らない。

この本に求めていたのは、「古いものがいつから存在しているのか、今それを買っているのはどういう人なのか」ということ。その点は取材できちんと押さえているので、抜かりはない。

例えば第一章で取り上げられているものは、「闇市横丁」(池袋)、コリアンタウン(東上野)、三業地(大塚)、赤線跡(東向島)、旧軍軍装品店(神保町)、横浜おでん横丁(横浜市西区)、米軍基地(福生)、ロープウェイ(埼玉県長瀞町)、花やしき(浅草)。

行ったことがないところも半分くらいあるが、「軍装品店」には驚いた。ここは神保町に2010年にできた新しい店だが、レプリカではなく、「本物」。銃は実銃(非可動)、軍刀は許可証つき。軍装品収集はカネがかかるとは知っていたが、海軍中将の正装一式で120万円と書かれている。本物はそのくらいはするだろう。ナチス時代のドイツ軍の本物であれば、数万ドルはするはず。店主によれば、遺族が亡くなったり、旧家が道具ごとすべて売りに出たりすることが多くなったので、本物は今でも市場に出回っているとのこと。飾っておくのであれば何でもいいのだが、本物はオーダーメイドなので、自分で着るつもりなら、サイズの合うものしか買えない。

東向島の赤線跡も、当時の建物がそのまま残っている貴重なところ。こっちの方にはほとんど行ったことがないので、まだあるうちに行かねば。