失踪日記2 アル中病棟

吾妻ひでお失踪日記2 アル中病棟』、イースト・プレス、2013


失踪日記』の続編みたいなタイトルだが、内容はアル中病棟に入った後の話。しかし、こちらも傑作だ。精神科病院の「アル中病棟」生活をマンガにしたもの。題材がおもしろいし、マンガそのものもおもしろい。

著者は97年頃から酒量が増え、98年頃には連続飲酒状態で、寝ている時以外は飲んでいる。98年末に家族に取り押さえられて、アル中病棟に放り込まれる。

入院した病院は、3ヶ月の間に1期、2期、3期と治療プログラムが作られていて、1期は閉鎖病棟扱いで拘束状態。2期、3期は契約制(患者が同意した上での治療)。

病棟内は、酒や賭け物になるようなもののほか、携帯電話も持ち込み禁止。これはつらいわ。テレビは時間を決めて見ていいことになっているが、あまり見る人はいない。タバコも吸っていい場所は限定。

アル中の自助グループには、匿名制の「AA」と、実名制の「断酒会」があり、患者は参加を推奨される。というか、昼間は、断酒の自助グループに参加することが日課。これ以外は、抗酒剤を飲んだり、ミーティングで過ごすことが病院の毎日。

当然ながら、患者は何回も病院に入っているベテランが多く、断酒の決まりを破る人も多し。バレたら、一日ガッチャン部屋(拘束)。その後も閉鎖扱いになり、1周間散歩もさせてもらえない。

変な人多数。病院内の人間関係もたいへんだ。アル中病棟にそんなに性格のいい人が多いわけはない。しかも、普通の入院だったら、同じ部屋であっても、カーテンで仕切ってあって、全く人間関係などないということはざらにあるが、アル中病棟は、ミーティングやら何やらがあるので、人間関係抜きということはありえない。

断酒の影響で、不眠も多い。多くの患者は睡眠薬を常用しているが、それでも寝られない人が多い。

アル中病棟から退院して、そのまま断酒できる人は2割くらい。後は、社会とアル中病棟の往復状態やら、行方不明やら自殺やら。しかもアル中は一回なると、一生完治はしない病気。また酒を飲んだら、元の木阿弥だ。

鴨志田嬢『酔いがさめたら、うちに帰ろう』もおもしろかったが、こちらは、入院生活の細かいところが淡々と描かれているのがおもしろい。2度読んでも十分たのしめる。