金正恩の北朝鮮 独裁の深層

黒田勝弘武貞秀士金正恩北朝鮮 独裁の深層』、角川ONEテーマ21、2013


黒田勝弘武貞秀士北朝鮮対談本だが…これはおかしい。トンデモ本とまでは言えないが、それに近いところがある本。

まず武貞秀士がおかしい。金正恩がその気になれば、北朝鮮は「開発独裁」体制になれるといっている。その気になればと言っても、金正日時代に経済政策の転換は何度も試みられて失敗しているし、金日成時代にもそういうことはあった。外国に経済を学ぶ留学生を何人も出して、外の世界に学んでいるとも言っているが、それが実現できないのが北朝鮮の社会。わかってない。

それは黒田勝弘がわかっていて、たしなめているが、黒田勝弘もそれ以外のところではおかしなことを言っている。中国が北朝鮮核兵器を容認しなくなっていて、その除去を目指しているという話。中国がそのように考えていたとして、どうやって実行するのか。北朝鮮が潰れなければ、ありそうもないことだ。

お互いが、相手に対してかなり批判的な立場で(険悪ではないが)議論しているので、それはいいが、黒田勝弘は韓国に30年もいるベテラン記者だし、武貞秀士朝鮮半島問題の専門家で、延世大学の教授をやっていた人。この経歴の人にしては、どうも言っていることが危なっかしい。

まだ黒田勝弘はちょっとはましだが、武貞秀士は、極端な想定に基づいてものを考え過ぎだ。あまりアクロバティックに考えていると、早稲田の重村氏みたいなことになってしまう。よくよく気をつけて発言を聞いたほうがよい人。とにかくおかしなことを言い過ぎ。