女は笑顔で殴りあう

瀧波ユカリ、犬山紙子『女は笑顔で殴りあう マウンティング女子の実態』、筑摩書房、2014


言葉や態度で自分の優位性を誇示する「マウンティング」が、女性同士の場合はどのように行われるか、というネタでの対談本。辞書(大辞林)の定義だと、「攻撃を抑止したり社会的関係を調停したりする」行為。

あとがきには、「マウンティングを批判しているのではない、群れる生き物の必要悪です」と書いてあるし、他人の批判というより半分は自虐ネタだから、そこはイヤミっぽくはないが、内容はかなりたいへんな本。

自慢も、自慢への対応も、場の雰囲気をこわさないようにしなければいけないところがややこしい。似たようなことは男でもやっているが、男の場合はもっと直接的。誰が一番エライのか、見た目でわかるようになっている。その点、女は微妙なところで優位性を見せつけなければいけないので手間がかかっている。

「そんなうざい奴とは付き合うな」で片付けられないところもおそろしい。どこでも行われていることなので、うまく切り抜けられないと居場所がなくなる。下手をすると、うつ病になってしまったりする。これはつらいわ。

マウンティングをやめられるとすれば、「すべてにおいて完璧で、人に自慢することもしない、聖人」に会うことだというのが、この本のオチ。確かにそんな人に会ったら、マウンティングなどアホらしくなってくるかもしれない。その効果は聖人に会っている時間しか続かないような気がするが…。

しかし、日本以外の社会でのマウンティングはどうだろう。前に「中国人は、夫の社会的地位で自動的に権力関係が決まるので、お互いに面倒な意地の張り合いはしない」という話を読んでいるので、社会ごとに話は大違いのはず。こういう話は外国人が混じっていたほうがおもしろいだろうが。