ヴェルディ

加藤浩子『ヴェルディ オペラ変革者の素顔と作品』、平凡社新書、2013


これはヴェルディ生誕200年の去年に出た本。新書だが、内容はきちんとしていて、勉強になる本。

前半が、ヴェルディの生涯とオペラの歴史を重ねあわせて解説する部分で、後半が、ヴェルディ作品の解説。

特に前半の部分が、ヴェルディの何が革新的だったかをていねいに解説していて有益。オペラは歌手中心の芸術だが、その歌手はだいたいパトロンがいて、半ば娼婦扱いされていたとか、ヴェルディは、イタリア建国に貢献した愛国者のように思われているが、あんまり政治に入れ込んでいる人ではなかったこと(しかし、建国の英雄扱いされることについてはウェルカムだった)など。

何より重要なのは、ヴェルディの音楽的革新だが、当時のオペラの作曲形態(最初の時点で完成しているのは歌パートだけで、オケパートは後で足していく)、台本と音楽の結びつけ方、合唱の活用などなど、オペラをちゃんと見ている人でないとわからないことが書いてある。

何より、ヴェルディの幸運は、その活躍時期が、著作権の概念がイタリアで確立された時期とかぶっていたこと。このおかげで、たくさんの作品を書き飛ばさなくても、少数の作品に集中できた。作曲家による上演のコントロールなど、ワーグナーとほぼ同じ時期だが、考えていたことも非常に似ていた(作品はかなり違うが)ことがわかる。

ヴェルディ作品の演奏や演出、レオ・ヌッチ、ミケーレ・マリオッティ、フォルトゥナート・オルトンビーナ(フェニーチェ歌劇場音楽監督)へのインタビューなど、短いボリュームで詰め込んでいる。