いえ 団地 まち

木下庸子、植田実(編著)『いえ 団地 まち 公団住宅設計計画史』、住まいの図書館出版局、2014


これは大変な本。半ば資料集。タイトル通り、団地、特に日本住宅公団住宅・都市整備公団(現UR都市機構)が建てた集合住宅のうち、55の団地を選んで、写真、歴史、設計、特に団地全体の配置計画に注目してまとめた本。

基本的には、建築家のための本なのだが、団地好きな人には、これ以上ない本。図面だけでなく、ちゃんと現地に行って取材して書かれている。もともとはUR都市機構が、日本住宅公団発足50周年の事業の一環として、これまでの公団による集合住宅建設を振り返ったもの。著者は、URの中の人で、仕事として取材をしていたのだ。内部資料を使える立場にいた人が書いているので、外から写真だけを写した本とは違うもの。

巻末には用語集や、年表もついている。これを読んで、自分が住んでいたのが、「下駄履き市街地住宅」と呼ばれるタイプの集合住宅で、土地所有者と住宅公団が提携して、下層階を店舗、上層階を住宅として建設するというものだったことがわかった。

自分が住んでいたのは、1階がスーパー、2階、3階が民営集合住宅、4階以上が公団住宅という奇妙な構造の住宅。3階と4階の間は行き来ができない構造になっていて、入り口も別だった。1階はジャスコ(現イオン)が入っていて、買い物は簡単だった。京都では当時団地は少なかったので、住民の子供は他の子供からけっこういじめられていたりした。

この本に掲載されているのは、取材の都合の問題で、主に首都圏とその近辺が多いのだが、とにかく、団地のバリエーション、まちづくりの考え方など、これだけ多彩な姿があるということに感動。行ったことがある団地はほとんどないが、この本があれば、どこの団地を見ればいいかがわかる。これはありがたい。