斎藤環トークイベント

「ヤンキー人類学講座 斎藤環トークイベント」、鞆の津ミュージアム、2014.6.15


これは先日、都築響一と上野友行の二人で行われていたトークイベントの第4回。ほかは、相田みつをの子息で、相田みつを美術館館長の相田一人、それから茂木健一郎だが、この2回は行きそこねた。

斎藤環は、本はともかく、直接話を聞くのは初めてなので、楽しみにして行ってきた。期待に違わず、非常に明晰な話をする。半分はスライドショーで、ビデオクリップも数本混ぜてあった。

「ヤンキーについて、みなさんが初心者だという前提で話しますから、本や今までの話をご存知の方は重複をご容赦ください」という前振りで話をはじめたが、1時間40分ほどのトークは、斎藤環が準備したスライドの3分の2くらいしか消化しておらず、かなり話し足りないようす。

内容は、著書を読んでいれば既知のものなので、論理展開にはそんなに目新しさは感じなかったが、日生学園の内情を紹介するビデオクリップにはおどろいた。起床から、床掃除、トイレ掃除の様子を映しているもので、1990年代に放送されたものらしいが、自衛隊どころか、アメリ海兵隊でもここまですごくはない、というレベルのもの。

自衛隊海兵隊は軍隊だから、規律といってもそれなりに合理的理由があると思うが、これは「規律や掃除は心を美しくする」という、ヤンキー的な信条から来ているものなので、軍隊とは違う変な情熱を感じる。全員丸坊主の男子高校生が、叫び声をあげて掃除をしたり、廊下を走ったりするのは、鳥肌モノ。まさに「あなたの知らない世界」だ。

斎藤環は、都築響一とは違って、ヤンキーに知的興味を見出してはいても、愛を感じているわけではないので、ちょっと突き放した見方をしているところが、おもしろかった。質問もきれいにさばいており、よくできた学会発表という感じ(いい意味で)。

ヤンキー文化は、現代美術と同じようなもので、その中にいた人にはよくわかるが、それを知らない人が外面だけを見ていると、単なるおもしろ生態学っぽくなってしまう。その微妙なところをうまく渡っていて、楽しく、緊張感をもって聞けた。

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