戦争の日本中世史

呉座勇一『戦争の日本中世史 「下克上」は本当にあったのか』、新潮社、2014


これは非常に「アタリ」の本。まったく退屈するところがなく、どこを読んでも新鮮な驚きだらけ。内容は、元寇から応仁の乱終結までの日本中世史を、戦争を軸にして描いていくもので、この本自体が新事実を発見しているというよりは、過去の研究を批判的に再検討する中から結論を持ってきている。

この再検討のプロセスと結論が、高校教科書の日本史の記述に慣れた者にとっては、かなり衝撃的。蒙古襲来の際に日本側が一騎打ちを挑んで蒙古軍にボロ負けしていたという話は、出典があてにならないので疑わしいということに始まり、「鎌倉幕府が滅亡した原因は、結局わからない」という断定、半済令の意義、南北朝期の戦いのどこが「革新的」だったのか、等々、自分のこれまでの認識が片っ端から覆された。

しかも、この本、自分の中できちんとつながっていなかった、南北朝期から、応仁の乱に至る幕府の体制と将軍権力の内実をきれいに整理してくれている。これでようやく自分の頭のなかの整理ができた。本当にありがたい。

史料の読み方についても、「階級闘争史観」「進歩史観」の読みと、著者の読みがどう違うのかを逐一示してくれて、非常にていねいで親切。

これはざっと読んだだけだが、最低もう一度熟読する必要を感じる。また著者の前著『一揆の原理』、洋泉社、2012、も非常に読みたくなってきた。こちらもたのしみ。