ウェルテル

マスネ「ウェルテル」、ヨナス・カウフマン、ソフィー・コッシュほか出演、アラン・アルタノグル指揮、メトロポリタン歌劇場管弦楽団リチャード・エア演出、METライブビューイング、2014.4.17


METライブビューイングの今季の上映にやっと行ってきた。もう終わったプログラムは、「エウゲニー・オネーギン」「鼻」「トスカ」「ファルスタッフ」「ルサルカ」「イーゴリ公」。ちょっとくやしいがしかたない。

「ウェルテル」は初めて見る舞台。元ネタはもちろんゲーテ。しかし話は例によってアホらしい。ウェルテルが、惚れた相手のシャルロットをさんざん口説いた後になってから、シャルロットが「わたしは婚約しているの。今思い出したわ」って、そんなこと先に言え。

3幕でとっくに結婚してしまったシャルロットは、まだあきらめないウェルテルと逢引きして抱きしめられるが、いきなり突き飛ばして、「そんなことはムリ」と言っている。かなりひどい女。しかも4膜の冒頭でいきなりウェルテルがピストル自殺。いきなり死んだと思ってびっくりしたが、血まみれになって4幕を歌い通している。歌ってから死ねばいいのに。まあいろいろとむちゃな話。

しかし、主役がカウフマンなので、ストーリーの破綻はまったく気にならない。かっこいい男は何をやっても絵になるのである。歌がいい、顔がいい、演技もできて、言うことなし。フランス語もうまいわ。メトの観客は大喝采だ。1969年生まれだから、まだ45歳。あと20年は歌えるね。幕間のインタビューで、ドイツ、オーストリアでの「MET HD」の観客が100万人を超えたことに対して、ドイツ語でコメントしていて、「オペラは死んだ芸術ではありません」と言っていた。あんたが生きているうちは、オペラは死にませんわ。

相手役のソフィー・コッシュも、顔よし、声よしの人。カウフマンとの同じコンビで、このオペラは2回歌っていて、息もぴったり。今回はもともとエリーナ・ガランチャがやることになっていた役が、出産休養で回ってきたというもの。ちょうどいい人が代役でよかったわ。

音楽は非常にキレイ。歌もオーケストラもたのしめたので、よしとする。