トップシークレット・アメリカ

デイナ・プリースト、ウィリアム・アーキン(玉置悟訳)『トップシークレット・アメリカ 最高機密に覆われる国家』、草思社、2013


原題は、"Top Secret America The Rise of the New American Security State"。著者のデイナ・プリーストは、CIAの秘密収容所を暴露して、ピュリッツァー賞を2回も取った「ワシントン・ポスト」紙の記者。ウィリアム・アーキンは、米陸軍情報局からキャリアを積んで、現在軍事アナリスト

9.11テロ事件とイラク戦争以後の、アメリカにおける諜報機関とその秘密活動を、迫れる限りで明らかにした本。元になったのは「ワシントン・ポスト」紙の記事だが、「安全保障上の理由で」記事として差し止められた部分を含めて書くために、本にしたと序章に書かれている。

とにかく、現在進行中の諜報機関の活動をここまではっきり書いたことに脱帽。これは、諜報機関の活動を知悉した人が、徹底的に調べなければ書けない。読んでみると、わずかな内部告発者の証言だけに頼った本ではなく、公開された情報から現地調査も含めて、膨大な取材をしていることがわかる。これだけの調査に基づく本書の内容は信用せざるを得ない。

この本で書かれているのは、テロ事件の後、アメリカの諜報機関の活動、予算、権限が青天井で肥大化し、もはや誰もコントロールできない状態になっていること。「テロ対策」の名目さえ立てば、すべてのことが認められるようになったので、必要性があるのかどうかに関係なく、諜報機関は情報をなんでも集めて収集するようになった。膨大な量のレポートが作成されているのだが、その全部を読める人はもちろんおらず、トップは要約の要約しか読まないので、集められた情報は砂漠に水をまくように捨てられている。

諜報機関アメリカでインテリジェンス・コミュニティとして認められた16の機関)は、それぞれバラバラに活動していて、国家情報長官は、それらを調整したり、指揮したりすることができない。国家情報長官には人事権がなく、各機関の情報を集約することもできない。

諜報機関肥大化の原因だった、オサマ・ビン・ラディンは殺害され、アルカイダは大きな打撃を受けたにもかかわらず、アメリカの諜報機関の活動が縮小される気配はない。諜報活動に投入された莫大な予算は、その多くが外部委託されていて、軍や諜報機関を退職した高官たちが会社を作って、予算を引っ張り、カネを懐にするという笑えない事態になっている。

ほとんどの活動が米国内の監視になっている「アメリカ北方軍」の詳細や、無人機作戦の実態、特殊作戦軍隷下の「闇の軍隊」=統合特殊作戦軍(JSOC)の活動など、こんなことがあるのかと驚くような事実もてんこ盛り。

著者の努力には敬服するしかない。