睡眠のはなし

内山真『睡眠のはなし』、中公新書、2014


著者は、日大医学部精神医学系教授で、睡眠学、時間生物学専攻。この問題の専門家なので、学問的に確認されたことだけを書いている。これはありがたい本。

「睡眠のメカニズム」、「睡眠と健康」、「睡眠とうつ病」の3つのパートに分かれていて、それぞれがおもしろいのだが、まずおもしろかったのが、「睡眠のメカニズム」のところで出てくる「夢」の説明。

夢を見ている時にはレム睡眠時で、その間には、脳の各部位がバラバラに動いていて、活性化されている部分と不活性化されている部分がある。ネコの実験では、レム睡眠中枢を破壊すると、獲物を取ったり、戦う動作をしている。動物は、脳を休めながら危機に対応する行動をリハーサルし、いつでも行動できるように練習しているという。

「睡眠と健康」のところでは、「不眠と睡眠時間」の説明がおもしろい。睡眠時間が多いと、むしろ眠りが浅くなり、中途覚醒が増える。睡眠を長く取ろうとして、寝床に入る時間が増えると、実際に眠っている時間と寝床で寝られない時間のギャップができ、慢性的な睡眠障害になっていく。身体疾患やうつ病と睡眠時間の相関を見ると、6時間から7時間の睡眠を取っている者が、それらの病気にかかる頻度が少ない。多すぎず、少なすぎず、適切な時間の睡眠をとることが重要。

「睡眠とうつ病」のところでは、うつ病時の睡眠状態の変化がおもしろい。ノンレム睡眠の出現が低下し、眠りが浅くなっている。また体内温度があまり低下しない。これは眠れないから体温が下がらないのではなく、体温を下げて体を休める仕組みがうまく機能していないから。不眠とうつ病の関係は、お互いが原因と結果として作用していて、うつ病だから眠れないという側面と、眠れないことがうつ病を引き起こす側面が両方ある。

最後に書かれている「睡眠障害対処12の指針」は、ごく常識的なこと。規則正しい生活をし、夜は眠気が来たら寝るようにする、寝すぎないように気をつける、というようなこと。

やはり生活をきちんとした方向に建てなおさないとダメみたいだ。