医は仁術

「医は仁術」、国立科学博物館、2014.3.29


科博の特別展は、「江戸時代の医学」。これもおおよそ歴史の展覧会。日本で初めて官許の人体解剖を行った山脇東洋の解剖図、杉田玄白らの『解体新書』とその原本『ターヘル・アナトミア』、平賀源内の書簡とエレキテル、漢方医蘭方医の薬箱、華岡青洲とその事跡、「生き人形」と呼ばれる人体模型、などなど。

これも、当時の医学がどのくらい実際の治療に役に立っていたのか、西洋医学のどの部分が日本に移入されていたのか、日本の蘭方医は、漢方医と比べてどこで優っていて、どこで劣っていたのか、というような問題に直接説明がなされているわけではないので、「医学史」という特殊な分野(江戸時代の医学なんて、今の医者にとっては、直接的な意味はないから、やっている人はごく少数しかいないと思うが)に詳しい人でないと、本当の意味はわからないという展覧会。

素人でも興味をひかれるものは、やはり解剖図。「五臓六腑説」の説明から、実際の解剖過程を描いた図、特に解剖の途中の段階を描いた絵は、あんまり写実的ではないが、おもしろい。

「房事養生鑑」という本が展示されていて、タイトルからすると、たんなる養生ではなく、セックスのことが書かれているに違いないと思うのだが、紹介されている頁には、その関係のことはまるで触れていない。医学展示だから、そういうことにも触れて欲しいと思うのはないものねだりか?

展示の終わりに3Dプリンタで出力した臓器模型や、IPS細胞を顕微鏡で見てみるコーナーがあった。これはいきなり唐突過ぎてそんなにおもしろくない。

客は、科博の展示にはめずらしく、若い人(親子連れではない)が多かった。医学生看護学生もけっこういたのではないかと勝手に想像。これも展示品の数が多かったので、全部見るには最低1時間と少しはかかる。