栄西と建仁寺

栄西建仁寺」、東京国立博物館、2014.3.28


栄西(この展覧会では、「ようさい」と読ませることになっている)の800年遠忌ということで、建仁寺とその関係する寺の寺宝を持てるだけ持ってきたというのが、この展覧会。セールスポイントは、「風神雷神図」を出してきたこと。これは建仁寺に行っても、本物はおいてない(複製があるだけ)ので、価値はある。

しかし、美術品の展覧会というよりは、栄西建仁寺の歴史がメインのコンテンツなので、歴史の展覧会である。前半の展示物の多くは、栄西自筆の手紙や経典類、日本への禅宗の移入についての文書。一部には現代語訳もついているが、当然全部は読めないし、文書の価値がわからなければ読んでもしかたがないので、どちらかというと歴史家や関係者向き。建仁寺の歴代住持の系図や彫像、墨跡も同じ。ただ、建仁寺の住持は、同じ法系で固められておらず、いろいろな法統の出身者が務めていたので、自然と多くの系統の学問が集まって、そのために「建仁寺の学問面」と言われるようになったという話にはなっとく。伝来の茶道具が多く置かれていたが、これもお茶をやっていないと価値はわからない。

後半では、海北友松が描いた建仁寺の襖絵や軸絵、白隠の墨跡、狩野山楽伊藤若冲、長沢蘆雪の絵、高台院の着物や関連の品、近所の六道珍皇寺つながりの小野篁像、そして目玉の風神雷神図は、ぱっと見てわかるおもしろさ。伊達に12世紀から続いているわけではなくて、山ほどお宝は持っている。展示品をひとつひとつ見て行くと2時間では足りない。疲れた。

外に出ると、上野は桜が咲く季節。平成館裏の桜も満開にはなってないが、2本くらいがきれいに咲いていて、あたたかい日だったので、ちょうど花見日和だった。みなさんが花見に押し寄せる週末よりは、ちょっと時期を外して、平日に行ってコーヒーでも飲んで桜を見る方がよほど気持ちのいい花見になる。この時期に行けてよかった。