北朝鮮経済のカラクリ

山口真典『北朝鮮経済のカラクリ』、日経プレミアシリーズ、2013


著者は、日経新聞編集局アジア部次長。ソウル支局に2度駐在し、北朝鮮ウォッチ歴は15年とある。この本は、韓国情報だけでなく、中国側からの情報もよく使って書かれている。比較的新しい情報も取り込んで書かれているので価値がある。

金正恩政権になって出てきた、2012年の「6.28措置」の細かい内容や、特別配給を受けられる特権層の規模(平壌市民250万人のうち50万人と書かれている)、不法な外貨所得の規模(偽札、偽タバコ、麻薬が、それぞれ1500万~2500万ドル、5億2000万~7億2000万ドル、1億~2億ドル、米議会調査局調べ)、国外派遣労働者からの外貨所得の規模(大雑把に見て2億7000万ドル)など、さまざまな数値やデータが出ているところがポイント。新書なので、出典注記がないのはしかたがない。

農民の自留地耕作の実態や、闇市の発展などの記述も勉強になった。新書版ではなく、単行本にして出典もつけてくれるとなおよかったと思えるし、体系的な本ではないが、それでも価値は高い。この分野の良書がまたひとつ出たことになる。