サロン・キティ

「サロン・キティ」、ヘルムート・バーガーイングリッド・チューリンテレサ・アン・サボイほか出演、ティント・ブラス監督、イタリア、フランス、西ドイツ、1976


イタリア製「ナチス+ちょっとエロ」映画。この映画のタイトルは原題通りなのだが、最初の日本語タイトル、「ナチ女秘密警察 SEX親衛隊」のほうが絶対、この映画の内容に即している。

親衛隊の将校バレンベルク(ヘルムート・バーガー)が、ナチ直営の娼館「サロン・キティ」をつくらせて、その客(将校やナチ党高官)の政治的忠誠をスパイさせるという計画をたてる。この娼館の女主人がマダム・キティことイングリッド・チューリン

この二人、「地獄に堕ちた勇者ども」の共演コンビだが、こっちの映画での演技はあまりに安っぽく、泣けてくる。わざわざヴィスコンティ映画と同じキャスティングなんかにしなければいいのに。

耽美な世界を狙ったのかもしれないが、肝心の娼婦たちはあまりかわいくなく、容姿も化粧も安っぽい。娼婦たちの中での中心人物がテレサ・アン・サボイで、この子はちょっとだけかわいい。しかしそれまで。好きになった空軍将校が、敵に亡命すると口走ったために、バレンベルクに殺されてしまい、それを恨んで、マダム・キティと組んで、逆にバレンベルクの言動を親衛隊に密告。バレンベルクは、サウナにいたところを踏み込んできた親衛隊に撃たれてそのまま死亡。サロン・キティにも敵の爆弾が落ちてきて、おしまい、というおはなし。

ナチのかっこよさも、エロ要素も、ストーリーも、すべてが中途半端。ヴィスコンティと同じレベルで比べたらかわいそうだが、こっちはオチがドリフのコントみたい。風刺としても全然効いてない。せめて小道具として使っているハーケンクロイツの旗くらい、ちゃんと作ってほしい。鉤十字がまるでマジックで描いたみたいに見える。

70年代の安いナチスものは、まあこんなレベルか。イタリア製の戦争映画にも安物は多かったから、驚くようなことではない。しかしヘルムート・バーガーがまるっきり無駄遣いされていて、もったいない。ヴィスコンティ映画ではあんなにかっこよかったのに…。