山下陽光のアトム書房調査とミョウガの空き箱がiPhoneケースになる展覧会

「山下陽光のアトム書房調査とミョウガの空き箱がiPhoneケースになる展覧会」、鞆の津ミュージアム、2014.3.16


いつも変な展覧館ばかりやっている鞆の津ミュージアムの今回の企画がこれ。

作家の名前は、山下陽光(やました ひかる)、1977年生まれ。この人のこれまでの活動歴の展示が半分、あと半分は、この人が現在やっている、「アトム書房」という戦後間もない時期に原爆ドームの近くにあった古書店の調査活動の成果の展示。

この人の方向性は、「働かないでも暮らしていける世の中を模索する」ということなのだが、当然のことながら、そんなものが簡単に見つかるはずはなく、何かやっては挫折の繰り返し。だったら最初から働いたほうが楽じゃないの?と思うが、あくまで芸術創作と経済を結び付けようと努力しているようだ。

実際にやっていることは、古着屋とか(これはあまりもうからなかったらしい)、「物を売らない店を開く」とか、そういうことなので、この人自身、それで食べていけるとは考えていないのだろう。多分生計はバイトで立てているはず。それでも、訳の分からないことをしていくことで、人的ネットワークはできているので、まるっきり空振りというわけでもない。

この人は反原発屋さんなのだが、現在行われている反原発デモを含めた抗議行動が、それだけでは限界があると考えていて、そこから調べ始めたのが「アトム書房」。自分も全然知らなかったが、原爆投下直後、原爆ドーム近辺に開店した掘っ立て小屋みたいな古本屋で、店主は英語のできる人だったから、占領軍相手に原爆で溶けたビンなんかを売ったりしてたくましく生きていた人。この人は、反原発運動のこれからに向けてのヒントが、「アトム書房」のような「商売になることはなんでもやる」たくましさの中にあると思っている。

出品物の中でおもしろかったのは、「NOPPIN新聞」(題名はNIPPONを逆さにしたというもの)なる、手書きのミニコミ誌。手書きで、コピーもしないので、1部ずつしかない。内容はほとんど伝言板か、小学生の壁新聞みたいなものだが、これがかなり笑える。あと、30年前の週刊誌「Emma」に載っていた、「広島銀行児島支店」の社員が学生服、セーラー服を着ている写真(児島は、学生服、作業服の製作が地場産業)もかなり笑えた。

16日は、Chim↑Pomとのトークショーがあって、これは行きたかったのだが、時間の都合で断念。鞆の浦は、広島市内からはかなり遠く、家から車で行くと片道2時間半かかる。新幹線で行けば早いが、駅から鞆の浦までが遠いのだ。5月にも別企画でトークショーがあるので行く予定だが、もうちょっと近くにならないものか…。それにしても、山下氏はともかく、この美術館は日曜日はともかく、平日に人が来るような場所にはないし、観光客が多いといっても鞆の浦は、温泉に入りに来るおばちゃんとか、ポニョの風景が見たいというヌルい人が来る所なので、そんなところで集客ができているのだろうか。そっちのほうが心配。