日本版NSCとは何か

春原剛『日本版NSCとは何か』、新潮新書、2014


法律ができたばかりの国家安全保障会議の解説本。春原剛の本なので、当然法律の解説本のようなものではなく、アメリカのNSCを事例として出してきて、国家安全保障会議が「どういう仕事を期待されている組織なのか」ということを要領よくまとめている。

簡単にいえば、いまの総理官邸はトップダウンで物事を決めるための道具としてはいろいろと不便なので、トップダウン決定の道具としてNSCを作りましょうということ。

国家安全保障会議で一番大事なのは、事務局である国家安全保障局とその長の事務局長。これをアメリカの国家安全保障担当補佐官になぞらえて、アメリカのSAがどのように機能してきたかを説明している。簡単にいえば、SAの人物と大統領との関係次第でSAの仕事は決まるので、組織的に決まっているというよりは属人的な要素が強い。

従って、日本版NSCがちゃんと機能するかどうかも、事務局長の人物と首相との関係次第。まだ組織もフルメンバーで立ち上がっているわけではないので、アメリカやイギリスの同種機関に学びながら徐々に体制をつくっていこうという話。

日本版NSCの創設過程で、どういう案が検討されていたか、警察や内閣情報調査室などとの関係はどうなるのか、首相の決定に対する「安全装置」としての役割は果たせるのか、など、いろいろな問題点にも言及されている。

新しい話を短くまとめた良書。