防衛疑獄

秋山直紀『防衛疑獄』、講談社、2008


著者は守屋武昌元次官と日本ミライズ関係の疑獄事件にからんで、「防衛利権フィクサー」で名前が売れ、2008年7月に脱税容疑で逮捕された人。「日米平和・文化交流協会」元専務理事。この本は、逮捕直前に書かれたもので、脱稿した後で逮捕、起訴されたために、そのまま出版することにした、と断り書きがついている。

内容は非常に微妙なもの。部分的に真実かもしれないことを書いているのだが、どこまで保身のために事実を曲げているのか、どこまで本当なのかがよくわからないのだ。

著者の立場と経歴自体が微妙なもので、戸川猪佐武のカバン持ちからスタートして、日商岩井の海部八郎や、金丸信に食い込み、防衛関係で、防衛庁、商社、アメリカ企業の人脈の仲介をやっていたというもの。怪しさ満点だ。著者は、「フィクサーなどではなく、人を紹介していただけ」と言っているが、それがフィクサーの仕事でしょう。

守屋元次官や、日本ミライズ宮崎元伸に関する部分は、著者の保身が関係しているので、どこまで本当なのかはわからない。

しかし、その後のいろいろな記述はおもしろい。特に早期警戒管制機B-767が、機体だけ違って電子装備は同じE-3より1機あたり200億円高く、その高騰分は政界への工作資金としてキックバックがあったはずという記述。これだけだったら、著者の想像で終わりだが、発注が決まる前にB-767を早期警戒管制機仕様にする作業が進んでいたのを見たというくだりは信じられる。

防衛族議員の力関係や、防衛庁が英語の資料を直接読めないので、代理店にまるごと翻訳させているとか、さもあろうという話がいろいろと出てくる。事実関係をきちんと調べられる人が、著者にインタビューを取って、どこかに書けば、この本はもっと価値が出るのに。