東京おんな一人飯

日高トラ子『東京おんな一人飯』、角川書店、2013


コミックエッセイ。タイトルだけ見るとグルメマンガ?と思ったが、そういうものではなくて「おんな一人飯」がネタの中心。よって、リンガーハットにも、吉野家にも行っている。

あまりうまくなさそうな絵柄を使っているが、この人の絵はけっこう上手い。たまに上手なカットが出てくるのでわかるが、けっこう漫画家歴が長いのだろう。下手な絵はないので安心。

店はだいたいふつうの定食屋とかチェーンのお店のようなところが中心。店の料理が中心なのではなく、「一人で行く」ことがネタの中心なので、これでいいのである。

バイトで食いつないでいるおねえさん(作中だと34歳ということになっている)が、そんなにぜいたくじゃないお財布と相談して、お昼の短い休みにぱぱっと食事をすませるのに、なるべくおいしいお店に行きたいという切実な願いをもってお店を探すのである。この微妙な願いが泣かせる。

そして、安い店、チェーン店でも出てくるものはおいしそう。描写している絵がおいしそうに描かれているのではなく、作者のわびしさと心根が、味を感じさせるのだ。

だいたいそのへんのお店で済ませているが、2軒だけちょっと違うところに行っていて、1つが、自民党本部の食堂でカレーを食べる編。これは震災直後に自民党の食堂が一般開放されていた時に行ってきたのだ(現在は関係者以外入れない)。なんてことはないカレーだが、非常においしそう。

もう1軒は、丸の内の「グリルうかい」。クリスマスのランチコースが4730円(税、サービス料別)の高級店だ。飲み物に入っている氷が丸く削ってあるというお店。客はだいたいハイソな奥様か、ビジネス接待の人。予約がなくても、ささっと席を用意してくれる所など、配慮の行き届いたお店。ここも行ってみたいわ。

このマンガはkindleで、角川の本が大安売り(7割引き)されていたので、買ったのだが、けっこうおもしろかったのでお得な気分。kindleは予告なく、いきなりバーゲンセールをやるので、こういうものが拾えるのがたのしみなのだ。