パチンコ「30兆円の闇」

溝口敦『パチンコ「30兆円の闇」』小学館、2011


これはKindle版で読んだので、2011年の刊行となっているが、内容は2009年の小学館文庫版と同じもの。溝口敦の取材はあいかわらず徹底的で、パチンコを取り巻くあらゆる関係者を網羅して取材を行っている。取材対象は、パチンコ台メーカー、周辺機器メーカー、パチンコホール経営者、店長、カバン屋、裏ROM屋、カバン屋、ゴト師、警察、業界団体、パチンコ情報誌暴力団、等等、膨大なもの。

読むとわかることは、もはや今日、パチンコはまともな人が娯楽で手を出すようなものではなくなっている、ということ。1台で当たりを出すために8万円も突っ込まなければならないとすれば、それはもはや半職業的なギャンブラーかギャンブル依存症の人しか手を出せない。自分はこれまでほんとうに少ない回数しかパチンコホールに行ったことがないが、あっという間にお金がなくなるので、長い時間プレイするということはできない。また本書の記述では、1円パチンコのような少ない金額で長く遊べる台はユーザーから支持されておらず、ほとんど収益源になっていない。結局、大金をつぎこんで、大当たりをねらう人しかついていけないギャンブルだということになる。

さらに驚くことには、パチンコ台の不正改造、つまりゴトが、パチンコホールから金をむしり取ろうとするゴト師だけでなく、ホール自身によって行われているということ。当然、検査を通さずに勝手に台を改造するのだから違法行為だが、ホール側は利益を出すためには台の改造をやらざるを得ない。この改造にも太陽な手口があり、パチンコ台各個を直接コントロールすることも可能だという。誰の台に出して、誰の台に出さないかをモニターで見ながら、ホール側が自由にコントロールできるのだ。これでは昔のサイコロ賭博のいかさまと変わらない。しかも、玉やメダルの計数機も改造されていて、3%や5%の玉やメダルを客からごまかしているという。まったくまともな商売ではない。

ゴト師とパチンコホールの攻防戦はこの本の白眉にあたるところで、日本人、中国人がいりまじって、ホールに対して大規模な不正行為をしかけており、その収益は月に億単位にのぼるというべらぼうなもの。それでもホールの経営が成り立つということは、一般の客がその不正行為分を含めてホールに払っているわけで、パチンコがいかに一般客から搾り取っているかということになる。

特筆すべきは、やはり警察との関係で、パチンコの不正状態がわかっていて放置されているのは、現在パチンコを仕切っているのが警察だから。パチンコ台を認証する保通協(財団法人保安電子通信技術協会)は、警察の支配組織で、ここは何もしないで審査料として莫大な金を取っている他、パチンコホールが管轄の警察署(署長らの幹部、生活保安関係の警察官)に対して払う賄賂も相当の金額。従って、警察はパチンコの取り締まりなどできない。店に対する搜索も、警察内部から事前通報があるので、実質的な意味はない。警察はパチンコ利権を自らの重要な権益としているので、現在の不透明なパチンコの位置づけを帰るつもりはなく、パチンコ業界の仕組みを変えようとする努力はすべて無駄なものに終わっている。

ギャンブルで儲かるのは胴元だけ、という言葉がパチンコほどあてはまる業界もないだろう。こんなものに手を出さなくてほんとうにラッキーだ。