兵士を追え

杉山隆男『兵士を追え』、小学館、2005


杉山隆男自衛隊ノンフィクション第3巻。これは海上自衛隊である。

潜水艦と哨戒機の2つに焦点をあてていて、500ページ全部が2つの乗組員に集中している。

一番おもしろいのは、潜水艦乗員の生活。潜水艦乗員の服に染み付いた臭いというのが洗濯しても簡単に取れない、ものすごいものなのだが、こればかりは文面から想像するしかない。しかし、狭い空間、個人のスペースはほとんどなしという状態で、無音状態が必要な時には雑音を絶対に立てられない(トイレも含む)というのは、並ではないストレス。食事くらいしか楽しみがない上、食事はいいので皆体重が増えるというのも納得。

哨戒機も、大変なことでは劣らない。トイレが事実上ない(旅客機のように、糞尿を上から棄てることができず、持ち帰らなければならない)というのははじめて知った。驚くのは、海上の船を見分ける監視員の目。軍艦は当然として、漁船から、貨物船、それらを偽装した海軍の船を含む数万隻の船を数十キロ先から識別できるのだ。

取材対象から徹底的に話を聞いているので、自衛隊に入り、潜水艦や哨戒機の勤務になった経緯や、家族、恋人関係の書き込みも緻密で、そこから、隊員の性格がわかり、それを通じてこの仕事の責任の重さがわかるという構成も読ませるところ。

プロの世界というのはこういうものかということをわからせてくれる本。1冊の執筆に3年とか4年かかるのも納得する。あと2冊を読んでいないので、これを読むのがたのしみだ。