日本と連合国の戦略比較

三宅正樹、庄司潤一郎、石津朋之、山本文史編著『検証 太平洋戦争とその戦略3 日本と連合国の戦略比較』、中央公論新社、2013


3巻シリーズの「太平洋戦争とその戦略」の3巻目。防衛研究所戦史研究センターの研究会での報告をまとめたもの。国際会議なので、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、シンガポールの研究者の論文も入っているし、ウィリアムソン・マーレーのような大物もいる。

太平洋戦争の開戦後の日本と連合軍側の軍事戦略に焦点をあてた最も新しい本で、この分野のこれまでの研究も簡単に紹介されている。この分野の研究を、日本側、連合国側双方の立場から包括的に概観できることがこの本の強み。開戦当初の連合国側の不統一や混乱、アメリカ内部での陸海軍の対立にもページが割かれていて、連合国側も必ずしも順調に戦争を遂行できていたわけではないことがわかる。

しかし通読すると、日本側の戦略のひどさ、というよりは戦略のなさは否定出来ない事実である。日本には作戦計画はあっても戦争全体の計画=戦争計画がなかったし、陸海軍の統合戦略もない。陸軍と海軍がそれぞれ立てていた計画をそのまま積み上げて戦争に突入しただけである。

しかも、無能な司令官の交替(南雲忠一)は行われていなかったし、敵の戦術から学ぶ努力もなされていなかった。国力や戦力の差以外にもダメな部分が多すぎる。この状態でよく戦争に突入できたというのが率直な感想。もちろん戦争を始めることと戦争に勝つことは話が別で、当然の結果を招いただけである。