兵士を見よ

杉山隆男『兵士を見よ』、新潮社、1998


杉山隆男自衛隊ルポ第2作。これは航空自衛隊、特に飛行機関係に特化した本。

著者自身がF-15に体験搭乗しているのだが、これが大変。戦闘機乗りというのはこれほど大変なものなのかということを思い知らされる。めまいくらいのことではすまず、実際に著者は、機上で嘔吐している。

戦闘機、救難機、航空医学実験隊、飛行教導隊(戦技訓練で敵役を務める部隊)の4つに対象をしぼって集中的に書かれているので、それぞれの部分の密度が濃い。なぜ飛行機乗りになったのか、飛行機に乗っていない時に何をしているのか、家族は夫や父のことをどう思っているのかにいたるまで、細かく書かれている。

この本の最後が、自衛隊から民間航空会社に移った人、そして著者自身の体験搭乗の結末で終わっている構成もうまい。民間航空のパイロットは、「他人よりうまく飛ぶこと」ではなく、「他人と同じように安全に飛ぶ」ことが仕事だし、著者は戦闘機の中で失禁寸前。自衛隊の飛行機乗りの世界は、普通の人ではない、別人の世界なのだ。