あなたの肖像─工藤哲巳回顧展

「あなたの肖像─工藤哲巳回顧展」、国立国際美術館


大阪でちょっと時間があったので、国立国際美術館に行ってみたらこの展覧会がかかっていた。工藤哲巳は、1935年生まれで、1990年に亡くなった人。絵描きというよりは造形美術の人。読売アンデパンダンに出品していて「反芸術」を標榜していた人だが、創作活動は、ほとんどヨーロッパでやっており、晩年は日本とヨーロッパを往復していたが、拠点はあちら。

作品は、鳥かごや水槽に、トランジスタやペニスが「栽培」されているものがやたら多い。とにかくペニスはこの人の好きなモチーフだったらしく、そこらじゅうにペニスが生えている「インポ分布図」など、かなり気に入っていたらしい。

「反文明」「反ヒューマニズム」がスローガンで、作品にもそれが現れているというのだが、メッセージはあんまりよくわからない。作品タイトルに物理用語が頻出するのだが、これもよくわからない。

しかし、ちょっと照明の暗い会場で、ペニスや目玉や手が蛍光色で光っている作品は、おどろおどろしくて気持ちいい。目玉と手はあまり実物っぽくないが、ペニスは形がかなり実物っぽいし、木の実みたいにぶら下がっているところもよいと思う。

この展覧会の図録はものすごい厚さでほとんど電話帳。600ページ以上ある。もちろんそんなものを持って帰れないのでちょっと見ただけだが、作品の写真より文章だらけだ。特別展がある地下3階だけでなく、平常展のある地下2階も、この人の創作過程の資料や同時代の作品にあてられていて、かなり気合の入った展覧会。