天皇愛

辛酸なめ子堀江宏樹天皇愛 一冊でわかる歴代天皇、その愛の軌跡』実業之日本社、2013


天皇愛」というタイトルから、「著者の天皇に対する愛」を想像していたら、それは違っていて実際には、「歴代天皇の男女関係」についての本。

歴史ライターの堀江宏樹天皇の恋愛、男女関係について語り、それに対して辛酸なめ子がツッコミを入れるというスタイル。辛酸なめ子はイラストも描いている。記紀神話から、現代の天皇制、女性宮家、後嗣問題まで通してカバーされている。

ざっと見て、おもしろいのは、推古天皇あたり、つまり歴史的記録が残っているところから、院政期くらいまで。天皇がハチャメチャなことでも何でもやれていた頃の話と、明治以後の現代までの話。

天皇の男女関係がネタだから、天皇家の人々がやりたい放題やれていた頃のことと、直接今につながる近現代の話には興味がわくが、これ以外はどっちでもいい。しかしおもしろいことは確か。堀江宏樹は、女性向けの歴史読み物を多く書いている人なので、この方面の知識は該博。

堀江宏樹は、「女性宮家創設には賛成だが、皇位の男系継承は残すべき」と考えている。辛酸なめ子も基本的にはその路線に賛成。それでは皇位継承の安定性問題の解決には役に立たないのだが、それは突っ込むと面倒なことになるからか、適当にごまかされている。

この本のいろんなエピソードを見ても、歴代天皇には奔放な人が多く、特に大正天皇以後の縛りの多い環境ではできなかったようなことをいろいろやっていた。それがいきなり行儀の良い君主であることを要求されて、その上子孫は残せといわれても無理なものは無理なので、男系、養子を取らない、側室をおかないという3つの条件を全部満たして皇位継承が持続可能ということはない。そんなことは著者らにもよくわかっているから、こういう本ができているのだと思うが…。