くすぶれ!モテない系

能町みね子『くすぶれ!モテない系』ブックマン社、2007


能町みね子の2番めの著書。つまり、『オカマだけどOLやってます』の次の本。図書館で借りたのだが、他の本がすぐに借りられたのに、これが回ってくるのが一番遅かった。一番読まれているのでしょう。

モテない系」は、だいたい「こじらせ系」に近い意味で使っている(もちろん、こちらの「モテない系」の方が順番としては先)。まったく男に相手にされない「圏外ちゃん」ではなく、男にチヤホヤされる「モテ子」でもない、自我がわりとはっきりしていて、自分の趣味が確立されている人のこと。ここでは女性限定で使われていて、男のモテない系、圏外は、女のそれとは全然違うと書いてある。

あくまで「モテない系」で、男から見向きもされないのとは違うので、人によっては付き合っている男やダンナがいることもあるが、その場合でも男ウケする方向にはいかない。自分は自分で、男の方に寄っていかない。従ってモテない系

モテない系の男の好みは、「線の細い文系男子」と「ちょいワルおやじ」。趣味として人前に出せるラインは、音楽:くるり、マンガ:松本大洋、お笑い:ラーメンズ松本大洋は別として、後はあんまりわからない。くるりタモリ倶楽部で見るだけ。あまり濃くないサブカル趣味ということらしい。それから音楽趣味の中にクラシックは入らない。マニアックすぎということ。

マンガで松本大洋というのは男に答えるときのためのもので、相手が女だと、南Q太やまだないと岡崎京子魚喃キリコ、そして忘れてはいけないものとして、岡田あーみんが上がっている。この本が出た時点で20代半ばから30代半ばの女性が子供の頃に感化されていたのが岡田あーみんということで、年の差を感じますね。

「文化系」「サブカル系」と呼ばないのは、それらは他人が褒め言葉として使ってくれるか、適当に知らないものをカテゴライズするときに使われる言葉だからで、自分で自分のことを言うときに使うものではないとおっしゃっている。オタクっぽい人にとってオタクは尊称で、自分で自分を言うときには使わないから、この辺の感覚は納得。

自慢やひけらかしになる手前でとどまって、自分の微妙な立ち位置をうまくアピールしている本。まあうまく書けている。

この本に挟まっていたのが、近所のスーパーのレシートに蛍光灯のメーカーとワット数が青いペンで書き込まれていたもの。生活感ありありだが、この町のご近所にも能町みね子ファンはちゃんと生息しているらしい。