慰謝料 上手にとれるかな

うえみあゆみ『慰謝料 上手にとれるかな』エンターブレイン、2013


コミックエッセイのようなものだが、類書と違うのは、「配偶者またはその不倫相手から慰謝料をとる」というテーマの実録ものだということ。これは生々しい。

しかも作者自身の体験も入っている。作者はこの本が出た時点で離婚はしていないらしい。夫の不倫相手から、200万円を取るという話なのだが、この不倫相手が家庭持ちで固い仕事をしている人なので比較的スムーズにお金を取れている(裁判なし)のだが、それでも作者の精神的負担は相当なもの。

どのエピソードを読んでも、慰謝料を取る側=浮気された側は、それがわかった時点でかなり精神的に打撃を受けていて、さらに慰謝料を取ろうとすると、証拠固めに非常に労力がかかり、それがまた精神的なストレスのもとになるという構図ができている。一番高額な慰謝料をとったケースで1100万円取ったそうだが、これも「怒りのパワーがないと乗り越えられなかった」と言っている。

とにかく、この本に出てくる人たちは、みな配偶者の浮気に真剣に怒っている。浮気している当人は軽い気持ちでやっているのだが、された方はそんなものでは済まないのだ。しかも、たいてい浮気している当人は自分の配偶者の怒りをちっとも理解しておらず、それがさらに怒りを増幅させている。この本を読んでて怖くなるのはそこのところで、浮気に寛容だと思われている日本社会でも、当事者はぜんぜん寛容どころではない。あたりまえといえばあたりまえですが。

一時の性欲や好奇心で、いろいろやっていると後でとんでもないツケが回ってくるというオチ。暗い井戸の底をちょっとだけのぞいたような気分。