ひとりごはんの背中

能町みね子『ひとりごはんの背中』講談社、2012


こちらは取材もの。能町みね子と編集者が、一人暮らしをしている人の家にあがり込み、ごはんをごちそうになりつつ話を聞くという企画を本にしている。取材相手は、まれに名前のある人(アイドルのKONAN中島らもの娘)もいるが、ほぼふつうの人で、ほとんどイニシャルしか出てこない。だいたい編集者が探してくるらしいが、たまに実際にナンパで探してきたりしている。

まあ「ヨネスケの、突撃!隣の晩ごはん」みたいな本だが、普通の人といえども、それなりに変な人が多い。一番笑えたのは、杉作J太郎の付き人っぽいことを、バイトをしながら続けているという31歳の人。杉作J太郎の付き人って、そんなものお金になるのかと思ったら、借金だらけだ。しかも杉作J太郎の紹介でライブハウスに勤めながらいきなり職場をトンズラし、同じ職場にまた舞い戻るというむちゃくちゃさ。「元エアセックス世界チャンピオン」となっているが、この人、前に見たことがあるわ。たしか、みうらじゅん安齋肇がスカパーでやっていた番組に素人さんとして出ていたような記憶が。ちなみにこの回のごはんは、コンビニ「ポプラ」の弁当。すでに料理ですらない。

これは極端な例で、他の人はふつうに料理をつくってふつうに出している。しかし能町みね子は自分で「人見知りだ」と言っているのに、よくこんな企画ができるな。編集者といっしょ(まれに編集者抜きで二人きり)だとはいえ、そこら辺にいる人からおもしろい話を引き出してくるのはなにげにたいへんだ。もとは「モーニング」の連載だったようだが、何でもしなきゃいけないのね。