47都道府県 女ひとりで行ってみよう

益田ミリ『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』幻冬舎、2008


この前読んだ泉麻人の本は、全国の「ど」のつく田舎をひたすらバスで回る旅エッセイ。普通の人が行かないようなコースで、しかも不便なバス旅、その上で押さえるべきところは押さえて、おいしいものも食べているという内容で、文章はプロの文章。泉麻人はエッセイで食べている人なのだからあたりまえだが、こちらはまるっきり違う。

とにかく思い立って、一ヶ月に1回、一人で47都道府県を旅するという企画を立てて実行した結果を本にしたもの。しかし、著者は、海鮮ものが嫌い、すき焼きを生卵で食べるのもあまり好きじゃないというレベルで嫌いなものが多く、行っている場所はガイドブックに載っているような場所、歴史や地理の知識はほとんどなく、文章はユルユルで、そこら辺にいるおねえさんの旅日記である。もともとは出版物にする予定のない、ブログ記事を本にしたもの。

なので、この本から何かの情報が得られるということはあまりないのだが、これはこれでおもしろい。小心者というところも、あまりやる気が感じられないところも、著者の人柄が出ていて、抵抗なく読める。旅エッセイではあるが、半分は著者の日記帳みたいなものなので、著者のことが気に入らないと読めないと思うが、他人に読ませようという押しが感じられないところがいい。

著者は33歳から37歳まで、毎月1回一人旅を続けて、その間に自分の年齢をしみじみ噛み締めているのだが、この中途半端な年のとり方も、なにか自分のことのようで、それが読みやすいのかもしれない。好き嫌いははっきりしているものの、押し付けっぽくないところもよし。本の中で著者が言っているのだが、旅に出たからといって、人と触れ合わなくてもいいし、それで十分楽しいのである。自分も旅に人との会話は求めていないので、この感覚はとても受け入れやすい。