バスで、田舎へ行く

泉麻人『バスで、田舎へ行く』JTB、2001


いまやすっかりバスオタクになっている泉麻人のローカルバス旅本。タイトルのとおり、行っているのはバスの便が一日に2本か3本くらいしかなさそうな田舎ばかり。JTB『旅』の連載企画を単行本化したものだが、稚内から種子島まで、ふつうは行かないところに行きまくっている。

京都では、広河原までバスで行き(バスはこの先には行かない)、さらに久多の民宿に泊まるという気合の入り方。広河原まで、出町柳から2時間もかかるのだ。久多なんかそもそもバスも通ってないし。民宿から送迎をしてくれるらしいが、京都の人でも広河原など行ったことがない人がほとんどのはず。だいたい何もないし。

泉麻人にとっては、この何もなさがいいらしい。まあバスおたくの田舎旅行などそんなもの。レンタカーでも借りれば簡単に行けるところにわざわざバスを使っていくのだ。何もないことに安らぎを感じられなければ行けるものではない。

たぶん、この本に載っているバス路線のうち、いくつかはもう廃止されているだろう。鉄道オタクと同じく、またはそれ以上に、ローカルバスオタクにとっては、バスに乗ることは時間との戦いみたいなものだが、泉麻人の文章からはそういう必死さがほとんど感じられないので好き。