防衛維新

久間章生『防衛維新 新たな安全保障戦略の確立に向けて』朝雲新聞社、2009


すでに引退した久間章生の著書。2009年7月刊行だから、この年の8月の総選挙(久間は落選、当選したのは民主党福田衣里子)に向けての運動の一環として出版されたものだろう。

読んでみると、防衛政策全般について広く薄く書いた本で、主題について読んでおもしろいところは特にない。ただ最初の部分に「守屋、宮﨑ルートの防衛汚職」事案に自分は関わっていないことの弁明が特に力を入れて書かれている。選挙に向けてこの部分はどうしても入れておく必要があったのだろう。守屋、宮﨑については容赦なく叩いているが、日米平和・文化交流協会の秋山との交際については、まったく恥じるところはないという姿勢。

選挙に影響があったのは、むしろ「原爆」発言の方だと思うが、それについては、さらっと「配慮が欠けていた」と書いているだけ。汚職関与の方がはるかに重大だと考えていたらしい。

読んでみると、この人が防衛問題に関係するようになったのは、1997年に第2次橋本内閣で防衛庁長官に就任してから後のことで、それ以前は運輸族としての経歴と、官僚時代に関係していた農業関係のキャリアしかなく、大臣指名された後で一から勉強することになったことがわかる。普天間基地の移転先について話が固まる前にキャンプ・シュワブ移設案に言及して、梶山官房長官からきつく注意されたことが書かれている。就任当初は失敗が少なからずあったようだ。

本の内容は、あたりさわりのないものだが、巻末にコーエン前国防長官からの推薦コメント、シュナイダー前国務次官との対談などが載っていて、アメリカ要人との関係を強調している。2007年にアメリカとの間で締結されたGSOMIAに関連して、米欧防衛企業の機密保護体制について書かれた文章があるので、武器共同生産についても関心があったことがうかがわれる。