日本の軍隊マニュアル

三根生久大、袖留木廣文『日本の軍隊マニュアル』光人社、2002


帝国陸軍陸上自衛隊を対比させた本。三根生が旧陸軍の部分を、袖留木が陸上自衛隊の部分を書いている。副題は、「帝国陸軍陸上自衛隊『戦闘力』の比較検証!」となっているが、内容はこの副題には沿っていない。主に、組織設立の過程と、教育、人事などについて書いているだけ。

三根生久大はこの分野では古手の評論家だし、著者紹介を見ると袖留木廣文は三根生久大の弟子でコラムニストということになっていて、それぞれの執筆部分はいちおう体裁が整っているのだが、旧陸軍と自衛隊の比較にはなっていない。同じ題目で別々の内容の文章が並列されているだけである。

特に旧陸軍の問題点は明確に指摘されているのに、陸上自衛隊については問題点の指摘または、旧陸軍の問題がどのように直っているのかということがあまり書かれていない。これについての言及があるのは、営内生活の部分くらい。旧陸軍の人事システムを批判しているのだから、いくら実戦の経験がないとはいえ、陸上自衛隊の人事に言及していないのは本来おかしい。この分野でライターをしようとすると、それはできないのかもしれないが。

ただ、「自衛隊の精神教育」と、「三矢研究」の部分は、よくわかっていなかったので参考になった。この「精神教育」については、「自衛官の心構え」(昭和36年制定)という「軍人勅諭」に相当する文書が引用されていて、これは初見だったのでありがたかった。これが現場でどのように使われているかをちゃんと書いてもらえるとさらにありがたいのだが。