面白い本

成毛眞『面白い本』岩波新書、2013


書評本、というか本の紹介本。岩波新書にこの手の本が入るのはめずらしいのではないかと思ったら、椎名誠『活字のサーカス』、宮崎駿『本へのとびら』ほか、あることはあるらしい。ただしこの本は、書評本でも、「ノンフィクションに特化した書評本」。これがありがたい。小説の書評本は、それなりにあるのだが、ノンフィクションに限定したものとなるとなかなかないのだ。

また、ノンフィクションと言っても、読者を限定した学術書とか、理系の基礎知識がないと読めない本もなかなか手を付けられないので、ここで紹介されているような本が自分の読みたい本リストに一番適している。

この本の中で紹介されている本のうち、何冊かは既読で、しかも自分にとってはそれほど面白いとは思われなかった本も入っている。例えば、松本修『全国アホ・バカ分布考』、フガフガ・ラボ篇『ブッシュ妄言録』、坂本雅之『ゲームオタクのためのミリタリー事典』といったもの。しかし、それはいいのである。この本の価値は、特定の分野にかかわらず、人文、社会、自然の幅広い分野で良質のノンフィクションを紹介していること。自分がある程度読んでいる分野については、ある程度こちらで判断できるので、自分がそんなに読んでいない分野、つまり自然科学系、医学・生物学、物理学、数学などの分野で良書をあげてくれていることがありがたい。

この本では、比較的長く読まれてきて、定評のある本は当然あげられているが、ノンフィクションの中には、「旬」がある本もあるので、数年ごとに同じ著者で書評本を出してくれるとありがたい。別に岩波新書でなくてもいいので。同じ書評者がずっとノンフィクション分野を追いかけてくれていると、新聞の書評欄よりもあてになるのだ。