極限芸術 ~死刑囚の表現~

「極限芸術 ~死刑囚の表現~」、鞆の津ミュージアム、2013.5,26


この前、都築響一トークショーに行った時にはまぬけにも展覧会がクローズしてから着いてしまい、肝心の展覧会を見られなくて話だけ聞く羽目に’なってしまったので,とにかく実物を見なければいけないと、やっとの思いで行ってきた。

小さな美術館で、展示室も3つほどしかないが、バインダーにとじてある作品も含めてだいたい100点くらいの作品がある。作品は落書きレベルのものからプロの絵描きレベルのものまで多種多様。題材は、抽象的なものから、マンガまでいろいろだが、植物を描いたものが多い。あと、目立つのは写経。般若心経を書写しているものが多い。ほかの経典は見当たらないが、教誨師が般若心経をテキストに取り上げることが多いのかもしれない。それ以外は、拘置所の部屋の様子や窓から見た景色(となりの建物しか見えないようだが)が目立つ。

作品の写真は、都築響一メールマガジンで見ていたが、実物はまた別の迫力。手抜きっぽい作品はほとんどなく、どれも非常にていねいに描かれている。明日の朝、執行の通知がくるかもしれないのだ。描くことが生きることの証となれば、おろそかに描くことはできないのだろう。拘置所の規則であまり大きな作品を持ち出すことはできないので、「大作」はないのだが、その分緻密。ゴマ粒のような小さなもので作った貼り絵もあったが、とにかく作業がていねいだ。

異色なのは、和歌山毒カレー事件林真須美。この人の作品には、生きることへの強力な執着を特に感じさせるものがある。家族のことや、生きることについてはっきりと描いている。

展覧会は、「死刑廃止のための大道寺幸子基金」の協力で開催されていて、作品の中には死刑廃止を訴えるものもあるが、展覧会は一切説明や政治的メッセージは抜きで、ひたすら作品が並んでいるだけ。余計なものがないところがいい。上手下手を超えたところで見せている展覧会。開催期間が約一ヶ月延長され、7月21日まで行われることになったので、もう一度くらいは来ると思う。