第5世代戦闘機 F-35の凄さに迫る!

青木謙知『第5世代戦闘機 F-35の凄さに迫る!』サイエンス・アイ新書、2011


F-35戦闘機の解説本。F-35の特徴、開発計画の歩み、テクニカル・ガイダンス(センサー、コクピット周り、機体、エンジン)、兵装、オペレーター(運用国、軍)、F-35のライバル機についてそれぞれ一章が割かれていて、このシリーズの例にならって、見開き2ページで一つの項目が簡潔に解説されている。ただし、右ページの図版は主に機体写真で、ページ半分くらいの大きさ。相対的に字数が多い。

開発計画の遅れがたびたび指摘されていて、開発費、調達コストの高騰が問題になっているこの飛行機、そちらはどうなのかという疑問に対するコメントはあまり書かれていない。この本が出版されたのは、2011年7月25日に初版第一刷が出たことになっているので、2年前の状況が書いてあることになる。計画全体が遅れていること、特にB型の計画に問題があって、計画自体がキャンセルされる可能性があるとは書かれているのだが、これはこの時点での情報。

戦闘機の開発は簡単に進行するものではないし、この本は執筆時点での状況にもとづいて書かれているのだから、その後に生じた事情について書かれていないのはしかたがない。しかし、2011年時点では、計画の進捗にはまったく問題はないと思われていたのだろうか。日本が導入を決定する際には、「実機がまだない」ということは問題にされていたが、計画の遅れは問題にされていなかったので、あまり問題視はされていなかったのかもしれない。

いずれにしても、「完成すれば高性能だが、いくらかかるのかわからない」という状態になってしまっているのでは、F-35計画そのものについて何も言えない。結果論だが、この本の出版もやや早すぎたのかもしれない。