私の奴隷になりなさい

私の奴隷になりなさい」、壇蜜真山明大板尾創路ほか出演、亀井亨監督、角川書店、2012


見たのはR-15版で、これとは別にR-18版があるらしい。たぶんぼかし、消しのレベルの違いがあるだけだろう。壇蜜鑑賞のために見たので、こっちでかまわない。

話は、そこらじゅうでおねえさんを食い散らかしているチャラ男の真山明大が、会社の先輩の既婚者、壇蜜を食おうとして、最初は手厳しく断られるのだが、けっこうあっさりやれてしまってほくほく。しかし話はここからが本番で、真山明大は、壇蜜の部屋でDVDを見てしまう。そのDVDには、壇蜜が「先生」(板尾創路)の奴隷にされており、壇蜜が自分と寝たのは「先生」の命令だったことが映っていた。その後、「先生」が真山明大の前に現れて、だんだん関係はしっちゃかめっちゃかになっていくのでした、というような感じ。

はっきり言って、壇蜜はエロい女優としてはそれほど大したものではない。このくらいならアダルトビデオに、もっときれいでもっとエロさ満開の女優がたくさんいるだろうし、M女映画としても、中途半端な感は免れない。

お話の流れとしては、壇蜜より、板尾創路の「先生」の方が重要な役。しかし、先生と壇蜜の関係についての描き込みがいまひとつで、なぜ壇蜜が先生の奴隷にならなければならないのか、よくわからない。板尾創路は演技はそんなにうまいわけではないが、雰囲気は十分に出ていて、この人のおかげでこの映画が締まっている。真山明大は、中途半端にかっこよく、中途半端にチャラく、中途半端に壇蜜を追いかける。すべてにおいてヌルい。

映画のタイトルは、最後に壇蜜真山明大に言うセリフから取られているのだが、その直前に壇蜜が、先生に奴隷にしてほしいと懇願する場面があるのに、なぜこのセリフが壇蜜の口から真山明大に向けて出てくるのかがよくわからない。M女って、そういうものじゃないし、壇蜜が暇をなぐさめるために真山明大に言ったのだとすれば、それもつまらない。

この映画の前後に、「壇蜜便り ~卯月の女~」というショートムービーが2本入っていて、こちらはちょっとけだるい感じで文学っぽいことを言う壇蜜を映したもの。映画本編とは別の監督が撮っているのだが、こちらのほうがよい。壇蜜はしゃべりがおもしろいのと、もうひとつは「テレビ向き」。監督または原作(映画オリジナルではなく、原作があるのだ)の問題かもしれないが、ハードなエロ路線にはそっち向けの人がちゃんといるので、そこにはあまりニッチな市場はない。エロい描写よりも、もうちょっと脚本で工夫してほしかった。