21世紀の中国 政治・社会篇

毛里和子加藤千洋、美根慶樹『21世紀の中国 政治・社会篇』朝日新聞出版、2012


朝日選書で出ている『21世紀の中国』シリーズの第2巻。政治と社会を扱う。毛里和子が最初の4つの章、第18回党大会で選出された新指導部、政治制度(党、全人代、軍)、共産党の変化、社会的摩擦を書き、加藤千洋が次の3つの章、民主化、メディアとインターネット、社会問題(農村問題)を、美根慶樹が最後の1章、腐敗を書いている。

毛里和子の執筆部分は、共産党の変化と民族問題のところがおもしろく読めた。共産党は、ほぼエリート集団となり、権力保持者を社会的に包摂する機関となった。民族問題については、毛里は経済的格差が主な原因だと認めながら、歴史認識におけるチベット人漢人の埋めがたい溝が重要だという。

加藤千洋の執筆部分では、特にメディアとインターネットの部分がよく書かれている。共産党のメディア支配に加え、インターネット空間ではある程度グリップを握りながら、下からの意見表明を抑えることはできないプロセスが描かれている。

一番おもしろかったのは、美根慶樹による腐敗の章。腐敗の規模も大したものだが、当然のことながら規律検査委員会と司法部門も例外なく腐敗している。地方党機関が、中央に摘発された党幹部を庇う(そうしないと、自分たちの立場も危うくなるため)ことも指摘されている。司法の独立もなければ、権力から独立したメディアもないところで腐敗を抑制するといってもできるわけがないと思われるが、明白な違法行為だけでなく、違法スレスレの不正行為の存在がより重要だとする指摘には納得。

現在の中国社会の問題点を簡便に知るために手軽で役に立つ本。