暇と退屈の倫理学

国分功一郎『暇と退屈の倫理学朝日出版社、2011


著者はスピノザ研究者。この本では、ハイデガーが5章、6章で集中的に取り上げられ、ハイデガーの退屈に対する概念が追究される。ハイデガーの議論は、自分が本来持っているはずの自由に目を向けない人間が退屈を感じるのだから、自由に向かって決断せよというもの。

著者は、このハイデガーの議論を批判し、返す刀でコジェーヴの「歴史の終わり」論も切って捨てる。それは退屈から離脱するために世界をリセットしようというもの。どこかの団体がやっていたような話だが、退屈を根本的に逃れようとすることをやめ、退屈と気晴らしを繰り返す日常生活を自分で引き受けていけ、というのが著者の立場。

議論は複雑だが、順を追ってきちんと説明されているので、説明はていねい。暇と退屈を脱しようとすることをやめなさいというのは行き着くべき結論の再確認か。注はていねいで、議論の元ネタに自分で当たろうとする時にも役立つと思うが、自分はそこまでは没入できない。