東京いいまち 一泊旅行

池内紀『東京いいまち 一泊旅行』池内紀、2012


東京のいろいろな町の安ホテルに一泊して町を遊覧、という旅行エッセイなのだが、池内先生は新宿駅から電車で20分ほどのところにお住まいだそうだ。よって、東京はどこでも日帰り圏内。しかし、だからといって一泊して悪いということはないだろうとおっしゃって、東京各所に泊まっている。まあ、ある意味ぜいたく旅行だ。

遊覧している町も、上野、赤坂、丸の内のような都会から、十条の大衆演劇場、牛込の寺、板橋区赤塚の「田遊び」、小菅の拘置所、さらに檜原村、青梅、八王子まで、どこから探してきたのかというスポットを回りまくっている。達人の旅行だ。

泊まっている宿は、椿山荘がお得意様プランで安くなっているところに泊まった以外は、全部安ホテル。自分がいつも安ホテルに泊まっているのでわかるのだが、ちょっと探せば安ホテルはいくらでもあるのだ。まあ、確実に日帰り圏内でそれをやるかというと、なかなかできないが…。

自分のような地方在住者にとってありがたい本であることは当然として、東京近郊住まいの人でも、飲み代にちょっと足したくらいのお金で旅行気分が味わえるし、往復の時間や交通費はほとんどかからないので、これは魅力的だと思う。池内先生くらいの達人になると、東京のおもしろいところなど無限に発見できそうだ。土地の由来もきちんと調べてある。おでかけの友に非常に便利そう。