青春と変態

会田誠『青春と変態』ABC出版、1996


会田誠にハマってから、本や画集を少しずつ集めているのだが、これは小説。中身は文句なくおもしろい。本としての出版は1996年だが、初出は同人誌で1993年。大学院を出て2年でこれを書いていたのか。さすが天才は違うわ。

主人公は高校のスキー部員で、近くの女子高スキー部と合宿に行く。しかし主人公(会田誠という名前になっている)の本当の目的はトイレのぞき。合宿所になっているロッジのトイレは男女共用なので、隣の個室に入った女子の排泄の様子を思い切りのぞきまくることができるのだ。

しかし「会田誠」が変態なのは、彼がただののぞきではないこと。女子トイレのぞきといえば、当然オナニーネタにするためだろうとおもいきやさにあらず。「会田誠」は、のぞいた女子の排泄や性器、肛門の様子をひたすらノートに書き綴るだけである。性欲のためにのぞいているのではなく、記録のためなのだ。

このド変態の日記という形で小説は展開していくのだが、女子高でも指折りのクール美人と「会田誠」はだんだん仲良くなってくる。そのうち「会田誠」にはクール美人に対する恋がめばえ、それを告白するために、二人で誰も登らない山頂に行くのだが…。

会田誠」が告白する前に、クール美人が出してきたのは、「会田誠」のかっこいい友人に対する恋心をつづったラブレター。これでヘコむかといえば、そんなことはなく、「会田誠」はこの状況を逆転利用する妙策を考えついていたのでした。この妙策の内容と、その結末がこの小説のオチ。これはやられたわ。

変態性と純愛が幾重にもねじれた、ある意味、真の変態小説。おそれいりました。裏の扉に1996年当時のものとおぼしい、会田誠ご本人の写真がある。ヒゲは生やしておらず、髪はきちんとしていて、とにかくかっこいい。いかにも文学青年っぽいし。この見た目でド変態というところが、また萌える。