飛騨の円空

「飛騨の円空ー千光寺とその周辺の足跡」、東京国立博物館


東京国立博物館でやっていた円空仏の展覧会。本館の1階入り口の奥にある規模の小さい展示をよくやる部屋でかかっていた。千光寺は飛騨高山の寺で、この展覧会は千光寺所蔵仏をメインに高山にある円空仏を集めたもの。

数は100体ほどなのだが、そんなに広くない部屋にがしがし置いてあるので、前後左右、円空仏だらけ。だいたい一木彫で、表面仕上げのない円空仏なので、森の中にいるような感じ。まあそういう効果を狙って展示が組まれている。

たぶん単体を少ない数で見るだけだと、そんなにありがたいとは感じないと思うのだが、こうして仏に囲まれてみると数は力なりというか、量産したことのすごさを強く感じさせられる。展覧会の説明だと、現存する円空仏は5000体と言っていたが、仏像というよりは木そのものみたいな作品なので、逆に木のもっている力に圧倒される。このうち1500体は岐阜県にあるとのこと。

男女和合のエロい仏「歓喜天立像」は秘仏だそうだが、これはお寺の奥においてあるものをチラ見させてもらってありがたさを感じると思うので、展覧会場においてあってもそんなにエロさは伝わらない。それより、「三十三観音立像」が、造型は同じなのだが、バラバラな高さと大きさになっているところが、きちんと調和していておもしろい。「両面宿儺坐像」は、二つの顔が表裏ではなく横に並んでいて、これがいい効果。彫り方も気合が入っている。

ガシャポンサイズのものから、人の背丈より大きいものまで、いろいろなサイズの仏像で、顔や造型が基本的に同じというものに囲まれる感覚が不思議で、気持ちいい。岐阜や愛知をまめに回ると、この味をもっと直接に感じ取れるのだろう。飛騨地方にはまだ行ったことがないのだが、これを見てかなり行く気をそそられてきた。