世界の特殊部隊作戦史 1970ー2011

ナイジェル・カウソーン(角敦子訳)『世界の特殊部隊作戦史1970-2011』原書房、2012


タイトル通り、特殊部隊の行った作戦の中で比較的最近のものを網羅的に集めたエピソード集。最も古いエピソードは、北ベトナム、ソンタイ捕虜収容所への救出作戦(1970)で、新しい方はオサマ・ビン・ラディン殺害作戦(2011)。原題は、「エリート戦士 ソンタイ襲撃からオサマ・ビン・ラディン殺害までの特殊部隊による31の英雄的ミッション」。

著者はアメリカ生まれ、イギリス在住のノンフィクション作家。対象となっている特殊部隊は、アメリカ軍のものが中心だが、それ以外にもイギリス軍、オーストラリア軍、ポーランド軍、西ドイツ国境警備隊、イスラエル軍など様々な国の部隊が登場する。

ひとつひとつの作戦にあてられたページ数は少ない(360ページあまりの本なので、単純に割ると1作戦12ページ)ので、そんなに詳しいことは書いていない。また、タイトル通り特殊部隊の英雄的活躍に焦点をあてているので、特殊部隊にやられてしまう方の視点はない。

しかし、これだけの特殊作戦を集められると、特殊部隊が時間とともにあらゆる任務に使われるようになり、テロリスト排除のような目立つ任務から、正規軍の支援、民生安定、災害救援など、何にでも使えるドラえもんのポケットのように働いていることがわかる。「砂漠の盾」「砂漠の嵐」作戦では、司令官のシュワルツコフは特殊部隊を使いたがらなかったが、それでも偵察、通信遮断、スカッドミサイル捜索などの任務に特殊部隊を使わざるを得なかった。

正規軍同士の大規模作戦から、外科手術的小規模作戦まで、特殊部隊はどこにでも引っぱり出される。また、マヤグエス号事件や在イラン・アメリカ大使館の人質救出作戦のような失敗例も取り上げられていて、事前の情報収集や準備における小さな問題や天候、アクシデントで特殊作戦が失敗する例が少なからずあることも示唆されている。

また、同盟国の特殊部隊が協力する作戦についても多く言及されていて、特にアメリカ、イギリス、オーストラリアの特殊部隊が平時から密接な協力関係にあることがわかる。さくっと読めるわりには情報量の多い本。この手の本によくある用語の訳出問題については、専門家(ここでは友清仁)が監修しているので、問題なし。