12人の優しい「書店人」

山本明文『12人の優しい「書店人」』商業界、2011


書店員のドキュメンタリー。この出版不況の時代に、書店員が生き残るためにどのように努力しているかを描いている。

中小書店、大規模書店、本屋大賞古書店、書籍流通、電子書籍など、狭い意味での書店の問題に限定せずに、いま本が抱える問題を流通面から幅広く追いかけている。

一読して、「ここまでしても本屋はこんなにたいへんなのか」という感想。本の売上は全体として下がっているので、当然といえばそうなのだが、これまでと同じやり方では売上はどんどん下がる上に、現在の本の流通システムだと、書店は流通の末端にいるだけなので、仕入れる本を自由に選べない。出版、取次、小売の関係が長く変わっておらず、再販制度で価格競争から保護されてきたので、容易にやり方を変えられないのだ。

そこにネット書店や電子書籍のような、まったく新しいシステムが入ってきて、そちらの比重が上がっているので既存書店の立場はますます苦しい。この本では、厳しい環境の中でも努力して実績を出している人たちのことが取り上げられているが、そういう人がいない書店では、「理由はわからないが売れる」か、「理由はわからないが売れなくなる」か、のどちらかで、しかも後の方が圧倒的に多いのだ。

書店も出版社も整理され、特に地方の中小書店は先行きは厳しいことになるのだろう。

書店員個人に焦点をあてながら、出版事業の問題を幅広くみている良書。