大河ドラマの50年

鈴木嘉一「大河ドラマの50年」中央公論新社、2011


著者は読売新聞編集委員(放送担当)。これまでに読んだ大河ドラマ関係本の中では、1番きちんと調べた上で書かれている。昔の資料、関係者へのインタビュー、いずれも幅広くあたっており、この分野での決定版といえる本。

大河ドラマの作り方に関しては、龍馬伝の現場の取材から始めており、ディレクターがどのような店に配慮してドラマを作っているかがよくわかる。このぐらいの規模になると、ほぼ映画に近いような感じ。

あとの部分は、第一作「花の生涯」から、第49作「天地人」までの各作品のエピソードが続く。ただの資料の羅列だけではなく、特に、NHK のプロデューサーや演出家、脚本家に焦点を当てて、制作側から見た大河ドラマをきちんと描いている点が特徴。

映画でも、俳優よりも監督、脚本家、プロデューサーに焦点を当ててまとめられることが多いのだから、これは非常に正当なまとめかた。著者が、テレビ担当記者でこの分野に関して、これまで取材を積み重ねてきたことの利点がよく生かされている。

また、製作者個人だけではなく、組織としてのNHK大河ドラマに関してどのように関わってきたかという点を、掘り下げて描いていることも、この本の優れた点。テーマの設定をどのように行っているか、近現代ものを三作製作してやめてしまった理由、途中で暦年一作というパターンが崩れた理由など、NHK の内部事情にきちんとあたった上で書いている。

さらに、制作費、ソフト販売、他局への番組販売などの諸事情についても言及されている。ソフト販売は1番多いのは、視聴率的にはそれほど実績が良くなかった「新選組!」だということだ。

内容が濃くて、非常に読みがいがあった。1年間放送する歴史ドラマという特殊なジャンルは、NHK でないと作れないものなので、今後の歴史も楽しみ。また、大河ドラマ誘致合戦について書いてある部分で、黒田官兵衛を取り上げているところはさすが。本書がかかれた時点では、もちろん、2014年の大河ドラマのテーマなどはわからない。