望遠ニッポン見聞録

ヤマザキマリ『望遠ニッポン見聞録』幻冬社、2012


ヤマザキマリの、「コミックじゃないエッセイ」。文章にほんのちょっとのイラストと、あとがきがわりのマンガがついているだけである。基本的なテイストはコミックエッセイがちょっと大げさに、笑わせるように書いているのに対して、こちらはより普通のエッセイ。しかし自分にとっては、こちらの方がはるかに読みやすいし、面白い。ヤマザキマリは、子供の時から外国によく連れていかれ、まだ20歳にもならないうちに画学生としてイタリアに行き、その後も旦那の仕事の関係やら何やらで、エジプト、シリア、ブラジル、アメリカ、ポルトガルなどいろいろなところに住んでいる人である。そういうことなので、この本は「外国から日本と日本人がどう見えているか」というネタについて書いているのだが、これだけバラエティのある国々を経験していると、ネタそのものが面白い。

デンマーク人のおばちゃんが、著者が子持ちで独身でいることを捕まえて、「こんなイイ女が、独身でいて、子供一人育てるくらいの甲斐性があるのに、日本人の男はなぜ彼女と結婚しようとしないのか」と、パーティーで日本人の男たちを難詰し、曖昧に答えをごまかされると、「あんた達は幼稚で従順な子供のような女しか選べない男」だと罵倒する場面は、非常に笑わせてもらったし、納得もさせられた。男女のどこを評価するかという基準だって、まるっきり違うのだ。

「テレビで外国人の話す言葉はなぜぞんざいな言葉遣いに翻訳されているのか」とか、「イタリア人から見て、日本人と日本以外の東洋人の共通点は何なのか」等々、結構納得させられる話が多い。コミックエッセイと同時期に連載されていたので、一部ネタがかぶっているが、そんなに気にならない。絵を丁寧に見なくてもいい分、コミックよりもよっぽど早く読める。ヤマザキマリは、マンガ家をやめてもエッセイストで食っていけると思う。