七十歳死亡法案、可決

垣谷美雨『七十歳死亡法案、可決』幻冬舎、2012


この著者は、『結婚相手は抽選で』がけっこうおもしろかったので、これも読んでみた。やはりおもしろい。

国会で「七十歳になった者はすべて(七十歳以上の者も)、二年後の法律施行時に安楽死」という法案が通る。みんなパニック、ではなくて、うるさい老人の介護をさせられている人はなにげに安心しているのだ。怒っているのは、68歳の人とか、「もっと長生きできると思っていたのにあてがはずれた」人。口うるさい姑の世話に辟易している妻や、そんなことにはまったく無関心な夫、年齢が進むに連れてとげとげしくなった姑、いい大学を出たのに結局ニートの息子などなど、ちょっと突飛な設定と、登場人物のキャラクターがよくマッチしている。

基本はコメディーなので、深刻さ抜きで読めるのがいい。扱っている問題は笑い事ではすまないような話ばっかりだが、そんな話を正面からやるのは、ノンフィクションの本にまかせておけばよし。1時間半でさくっと読める本なので、喫茶店や公園でたのしく時間をつぶせる。

そういう話だから、最後に設定がひっくり返ってハッピーエンドになるのはしかたがない。パターンは『結婚相手は抽選で』と同じだけど。ちょっと年齢の高い層向けのライトノベルという感じ。これはありだと思う。