宮崎哲弥 仏教教理問答

宮崎哲弥ほか『宮崎哲弥 仏教教理問答 連続対論 今、語るべき仏教』サンガ、2012


これは非常におもしろかった。宮崎哲弥が仏僧、仏教研究者と対談した内容を5本詰め込んだもの。対談相手は、白川密成(真言宗)、釈徹宗浄土真宗)、勝本華蓮(天台宗、文献学者)、南直哉(曹洞宗)、林田康順(浄土宗)の5人。いずれも40代以下の若手。

討論テーマは、オウム事件から、初期大乗仏教、死、葬儀、仏教の社会的地位、悪、成仏、死刑制度など多岐にわたっているが、相手のお坊さんはその分野の専門家だからちゃんと応答しているのは当然として、宮崎哲弥は、仏典から各宗派の教義まで、よくこんなことを知っているとあきれるくらいものを知っている。もともと仏教教学が自分のフィールドだった人だから驚くようなことではないのかもしれないが、「中論」を中心として、仏典の内容をきちんと把握していることについては、仏僧の高いレベルに達している。

それに、対談がきちんと噛みあっていて、相手の重要なポイントをきちんと捕まえ合っているので、読んでいて非常に気持ちよい。また、死刑制度についての議論(林田康順)では、相手の議論が十分でないと見ると、容赦なく、しつこく突っ込んでいる。こういう姿勢にも好感が持てる。

入門書という性格の本ではないが、この本を読んでいくと、それぞれの宗派の教義のポイント、仏教と社会との関わり方について、非常に理解が深まるようになっている。好著といえる。